観るものと、生活の日記

「ドリアン・グレイの肖像」

StudioLife「ドリアン・グレイの肖像」
★★+1/2

於:シアタードラマシティ
(東京公演 2004年9月1日~15日 大阪公演 2003年9月18日~20日)

原作:オスカー・ワイルド 脚本・演出:倉田淳


出演

  Azure Crimson
ドリアン・グレイ 高根研一 山本芳樹
ヘンリー・ウォットン卿 笠原浩夫 楢原秀佳
バジル・フォールワード 岩崎大 山崎康一
シヴィル・ヴェイン 林勇輔 及川健
ハーリー公爵夫人/他 深山洋貴
エイドリアン 佐野孝治 篠田仁志
アラン・キャンベル 牧島進一 寺岡哲
ヴィクトリア 篠田仁志 佐野孝治
トマス卿 寺岡哲
ジェイムス 奥田努 小野健太郎
アガサ叔母/他 牧島進一
ロミオ /他 下井顕太郎
マキューシオ/他 大沼亮吉 荒木健太郎
パーカー/他 関戸博一 宗村蔵人
召使 /他 三上俊 松本慎也
グラディス/他 吉田隆太
クラブの紳士/他 黒川幸一朗
ヴェイン夫人 石飛幸治
ブランドン夫人 ほか 藤原啓児
ヴィクトール 河内喜一朗



*感想*

○全体○

原作は面白いものの、現代で、しかもStudioLifeが舞台化するのは、どうだろう?と、やや心配。
作品への愛情をこめて、丁寧にしっかり作られているのは感じられました。 ただやはり、今原作忠実に舞台化したものを、面白く観るというのは難しいことだったようです。
「耽美派小説の舞台化」というからには、もう少し派手で絢爛豪華、退廃的な空気、など感じさせてほしかったのですが。2、3人での会話場面が多く、動きも少ないからか、最初のコミカルな場面と、ラスト以外はあまり魅力を感じず、3時間は長く感じられました。

「テーマは不明だけど面白い話」だと思い、ドリアンへの同情心もさほどわかなかった原作。舞台ではドリアンの気の毒さが浮き彫りになり、「悲劇に巻き込まれた不運な青年の一生話」という印象に様変わり。セリフまで忠実ながら、雰囲気が変わるのは不思議です。

今の時代で見れば共感しにくい場面もありました。
言葉も、古い翻訳どうりではなく今風に変えてほしいものがいくつかありました。「ドリアン」に限った話ではなく以前から気になっていたんです。死語やくすんだ言葉は耳ざわりになるので使わないでほしいです。色あせない新鮮なものをお願いします。

○衣装○

 特に上流階級の服がかわいらしくて、個人的にバジルのビロード調の上着、
ヴィクトリアの水色のドレスなどがすき。
ドリアンの服も最初の純粋なイメージに合ってかわいい。ベストはやけにカラフル(笑)
貧民街やアヘン窟に行く時は、暗い服に替えるとか変装してもらいたかったかな。 白くて上等の上着では目立ち過ぎて、18年待たなくても即ロンドン中の噂になりそう。

○美術・演出ほか○

何より水のみ場の花がきれい。造花なのか3、4種類くらいの花と ツタがからまって。生けたのも美術の人なのでしょうか。水のみ場が 出ている間ずっと見とれていました。

肖像画は、遠目では見づらかったものの両ドリアンにとてもよく似ていましたね。やはり美術の人が描いたのでしょうか。少し歪んだ肖像画、バジルに見せた時のかなり歪んだもの、 さらに赤く染まってしまったもの、始めの美しい肖像画、とちゃんと4枚用意して あったので驚き。絵は本物使わずごまかすのかな、とさえ思っていたので。
絵は常に上手側にかけられるため、席が下手だと見えにくいのが難点。

幕に大きくうつる写真を加工したような顔の方は、不自然に感じましたよ。 本当に凶悪な顔を本人にさせる+メイク、くらいではダメだったのかなぁ。 肖像画を見たバジルが「これは色情狂(という言葉にも驚いたけど)の顔だ!」 みたいに言ったけど「いやヒトの顔じゃないよ」と思っちゃいました。

度々薄い膜や仕切りを使って、光で場面の変化をつけるというのはきれいでした。

舞台の広さはずいぶんと余っちゃってたような感じが。
人も道具も上手側にばかり偏って下手側はぽっかりと空いていました。
特にCrimsonの方は小柄な役者さんが多いので、もうちょっと空間を埋める何かが合った方がよかったのでは。身長でキャスト分けるのをやめて、背高い人も混ぜるとか。
高身長のAzure組でもヨコは随分余って感じました。


<<18日ソワレCキャスト>>

ヘンリー卿の登場。「ああ楢原さんだ。きれいだし上手い~」(←ファンだから)。
原作のイメージより「面白さ」が強調してあって 「面白くておじさんっぽいところがある上、悪魔的な思想をもつ」 と、原作よりさらに謎めいたヘンリー像に。
「イギリス観」や「女性観」の語り方なんかが素敵。
山サキさんバジルはバジルらしく一貫して善良な感じと、画家らしい風格と 声が魅力でした。

自分の問題としてはあまりヘンリーの長い話きいていなかったこと(笑)。
ヘンリーは一般人には納得のいかないことをぺらぺら喋るイメージがあったんで、
「別に聞かなくていいか」と思っちゃって、聞き飛ばしてしまいました。
よその劇でも長い説明調のセリフって聞かないクセがあるんですよね。
変わったセリフなら聞いちゃうんですけど、ちゃんとした文章だと
却って頭に入りにくくて、どうでもよくなってしまう。

山本さんドリアンですが、美しいっていうより可愛らしい?
「モデルはうんざり」と上着のすそをはねあげた後、椅子をまたいじゃったりして。
髪型はアルフレッド・ダグラス(オスカーワイルドの恋人)みたい。
山本さんだと「少年のように可愛く」見えてしまいますね。
もうちょっと目を引くような美しさを無理にでも強調してほしかったです。
小さな子供が悪影響を受けて翻弄された挙句破滅していくような気の毒さがありました。
印象も、少し薄かったと思います。 もっと悪そうな感じがあってもよかったのに。
ラストシーンはすごかったです。絵から声が出てるの?と思ってたらドリアン。
苦悩に満ちたBGM(アルベニーノのアダージョ)とともに「ドリアンの悲劇話だった」
というのを感じさせられました。

及川さんのシヴィル・ヴェイン。とても可愛らしかったです。茶色の長いカツラもよく似合っていて。もう「オペラグラス持ってきたらよかったわ」と思うくらい(笑)
「ドラキュラ」から思ったのですが、及川さんの女性役はどうしても声に違和感があるんですね。見た目が可憐な分余計惜しく感じます。仕方ないのかな。何となく及川さんがドリアンだったらよかったかも、なんて想像していました。

舞台の空いてるところが広く感じてしまったのと、娼婦やアヘン窟の人も含めて「もうちょっと悪くてくどくて色っぽかったら」と思えるところがありました。

「ドラキュラ」以来すっかり「やけに上手い人」と印象づけられた篠田さんのエイドリアン。期待にたがわず、ホントに荒廃した感じでやはり上手。
それからヘンリーのいとこ役の吉田さん。いとこにしては若すぎるんですけど姿勢がしゃんとして、きびきびした様子が美しくて素敵。
キャスト表にないままヴィクトールだった関戸さんも、堂々として違和感無かったですね。


舞台挨拶
初めて舞台挨拶で一言コメントを聞きました。はっきり覚えてませんが
大阪に関する話が多かったですね。「大阪がすきです」というのと大阪の食べ物の 話。
石飛さんは「下町の大女優もあと2日、月影千草を目指します!」みたいなことを。
佐野さんは「衣装(ドレス)がぎりぎりです」と言っていたかと思うと
及川さんは「衣装が日に日にゆるくなっていっています」と不安な発言を。
今回出番は少なめですが、やせちゃうんでしょうか。
山本さんの「大阪がカンボジアよりすき」という発言が不思議だったんだけど
その前に小野さんが同じこと言ってたんですね。聞こえてませんでした。(笑)
小野さん、自己紹介の前に「大阪すきです!」って言っちゃって
笑い買ったりして「天然っぽい人だ」と思ってたけど、意味分かりにくい…。
楢原さんはみんなが結構ウケること言った後だったので「みなさん…」と
団員さんを見回した後、「大阪で生まれました!」ときめていました。

<<19日マチネAキャスト>>11列目・上手ブロック

舞台が始まったとたん「うわぁキレイ」って感じ。ヘンリー・ドリアン・バジル と3名そろわれた日には、みんなスラーッとしていて「贅沢なものを 見ている気分」がしました。大きい人ばかりだとかさ高く見えるときも あるのだけど、今回はただただ美しい光景でした。 アラン・キャンベル(牧島さん)とドリアンの場面もやはり美しかったですね。

笠原さんのヘンリーは華やかで、やはり少し愉快で、座り方など姿が決まっていて、18年経つと声も年をとっていて、「さすが看板」という感じでした。

高根さんドリアンも「高根さんが?」と思っていたけれど意外にはまっており、結構よかったです。
どうでもいいのですが、初めて肖像画を見た後「何て哀しい」というセリフが なにやら「ナンテカナシイ…」とカタコトっぽかったのだけ、不思議。 続く「何て哀しいことだ!」は標準発音なのに、なぜ。 未だに活舌はよくないのか、聞き取りにくいところありました。

岩さきさんバジルも、東京ではつっかえてたということですが、今回はなめらかだし、ちゃんと
画家らしく山さきさんに負けない風格を感じました。

林さんのシヴィルは、その柔らかくてきれいな声に驚きました。劇中劇の「ジュリエット」もっと聞いていたかったです。 ドリアンに振られてしがみつく場面では、客席から笑いが少し起きてしまったりして。Cでもそうでしたが、悲しさを通り越して怖さやおかしさにまで発展しちゃってたのかも。
ところで「恋して信じてたドリアンが気持ちを変えたことに耐えられなかったので自ら命を絶った」っていうのは今時ちょっと感じ入りにくい。

アランはAの牧島さん、Cの寺岡さんどちらもよかったですが、役どころも お気に入りです。セリフと、出会ってからじき離れていく様子、ドリアンに依頼される場面の苦渋した表情とかがすきです。出会いの場面は原作と少し違いましたが「ありうるだろう」ってことで倉田さんの解釈でしょうか。自分もかつて背徳生活を送っていたはずが、この憎みよう。ドリアンはどこまでひどい生活してたのでしょうか。他人を次々と破滅や自殺にまで追い込むとは。アヘンや娼家通い以上ですよね。アランにとってそこまで致命的だった脅しの内容も気になりますが…。

 ヘンリーもなぜああなったのか、ドリアンをバジルと同じく崇拝していたはずが何をしたかったのか、などなどその辺り想像するのは、面白いです。


舞台挨拶
Aキャストでも一言コメント付きの挨拶がありました。C以上に覚えてない上混同しているかも。
荒木さん?が「早くヒゲをそりたいです」と言えば女性役の深山さんが「早くヒゲを伸ばしたいです」
石飛さんは「下町の大女優は、茶屋町の大女優を目指します!」
高根さんは「ありがとうございました」だけで笠原さんに「それだけ?」と 突っ込まれ
笠原さんは「ハリーと呼んでください!」で実際に客席から「ハリー」と声が上がり
「みなさん、愛してます!」と叫ばれておりました。


<<19日ソワレCキャスト>>15列補助席・上手ブロック

Crimsonの大阪千秋楽です。しかし既に疲れて眠い状態なのがもったいないところでした。
相変わらず面白いヘンリー。山本さんは登場場面で、椅子にまたがった後のセリフが飛んじゃっていましたか?顔を後ろにやってうつむいてしまった間に、ヘンリーがやってきてうやむやに。

違和感を感じた及川さんシヴィルの声も慣れたのか、大阪初日ほどは気になりませんでした。上手いのは上手いから。母親の周りをはねる様子が元気でかわいい。

アランに遺体処理を任せている間(ところで遺体処理って人が鏡を見ている間に一人きりで済ましてしまえるもんなんでしょうか)良心を捨てて自分に酔いしれた感じが、怖くていいですね。ほんとに「何て人だ」状態。

「またあの場面や、この場面が見られる」といううれしさよりも、どちらかといえば
「まだあの場面も、この場面も残っているんだ。長いっ。」と思わせてしまう ところが多く、3時間辛かったです。

舞台挨拶
千秋楽の挨拶は、一言コメントはなしでした。座長さんが名前を呼んでそれぞれお礼を。
カーテンコールは3回。3回目に藤原さんが貴婦人口調のまま「みなさ~ん、座長が言葉が尽きたということで私が」と前に歩み寄り「劇団員全員でI LOVE YOUコールを送りたいと思います」としてホントに団員さん達から客席へI LOVE YOUコールがあって、とても暖かな雰囲気でした。

<<20日マチネAキャスト>>5列目・真中ブロック

大千秋楽。全体に、観た4公演中で一番見応えありました。

今回、どちらかといえばCrimsonよりAzureの方が気に入ってしまい、 席もいいし今日で終わりということで楽しみだったのですが、体調やや崩し気味。何だかふらついてるし吐き気はするし。
「大丈夫!」と言い聞かせてもちこたえましたが。

5列目だからよく見えて、一層「うわぁきれい」と心の連呼。やはり笠原ヘンリーが一番華やか。
肖像画の最初の変化も、何とか見えました。

ヘンリーの喋ることもようやく頭に少し入りました。「ああこんなこと言ってたんだ」と初めて分かったりして。1回観ただけでは分からないことがあるから、何回も観たくなるんですよね。
ドリアンが鏡で顔が変化していないか確かめている場面も、最初
「自分の顔に見惚れているのかな」と思い込んでましたし。

面白い公爵夫人な深山さん、娼婦役の時の「プリンスチャーミング」という言い方も毎回ちょっと
おかしみが。「あたい今日はとても鼻が高いんだから」という
セリフは意味がよく分からなかったのですが(ドリアンに会えてってことかな)
「悪魔に魂を売った人のお帰りだよ(?うろ覚え)」という言い方がすきです。

林さんのシヴィル声は変わらず素敵で熱演。ただ シヴィルがドリアンにしがみつく場面、今回も笑いが少し起こってしまっていました…。しがみついた挙句、蹴られてしまうとちょっと「ダイヤモンドに目がくらんだのか!(貫一お宮の)」みたいですしね…。
もうちょっと抑えた感じなら、よかったかなぁ。

高根さんドリアンがよかったです。堕落していく場面や、バジルに改心したい旨を
告げる場面なんかが、ぐっときました。
舞台挨拶
やはり一言コメントはなしで、座長からの役者紹介。カーテンコール4回目に座長が
「みなさまからの拍手(かな?)が私達の生きがいです」みたいに言って、再び藤原さんが
「みなさ~ん」と前に。「昨日から始まりました"舞台の中心で愛を叫ぶ"。
団員全員でみなさんにI LOVE YOUコールを送りたいと思いますが、もしよかったら、
みなさんも返してくださっても結構です」ということで、舞台からと、次いで客席からもたくさんコールが返されました。私も返しましたよ。楽しかったです(笑)

その後お花投げ。額にぶつかって(鈍)、岩さきさんが投げた赤いバラをいただきました。



© Rakuten Group, Inc.